宮本將廣のExtraColumn005「いつか、必ず…」

宮本將廣のExtraColumn005「いつか、必ず…」

「いつか、必ず…」

最近、私の中でよくそんなことを考える。 人生を生きていく中で、それぞれの分岐点やきっかけというのがきっとある。

私にもそんな瞬間が何度かあった。
そしてそんな出会いが何度かあった。 その中の1人…ラグビー選手「木村貴大」もそんなきっかけをくれる存在だった。

秩父宮ラグビー場に導かれた日

2月15日12時45分秩父宮ラグビー場 スーパーラグビーに参戦しているサンウルブズの試合がキックオフ。

他会場でトップリーグが開催される中、18708人の観客が集まった秩父宮ラグビー場の景色に私 が受けた衝撃は言葉にできない。

これが私にとって初めてのラグビー公式戦の観戦だ。 2019年ワールドカップも現地でみたいと思いながら、足を運ぶことはなかった。 思えば、本当に見たい!と感じるきっかけが自分の中では足りなかったのかもしれない。

その会場に私を導いてくれたのが今季からサンウルブズでプレーをする木村貴大だ。

木村貴大とは2019年11月16日に行った「木村貴大と藤田慶和の夢へのトライ」(通称夢トラ)を きっかけに出会った。

藤田慶和のことは以前から知っていた。世代トップの選手として早稲田大学在学中に15人制ラグ ビー日本代表としてメディアにも取り上げられ、ラグビーを知らない私の中で、「テレビの向こう のスポーツ選手」の1人であった。

※藤田慶和は現在7人制ラグビー日本代表としてチリで行われている世界大会に参戦している。

しかし、申し訳ないが、にわかラグビーファンどころか、ラグビーの「ラ」の字も知らなかった私 には木村貴大は全く知らないラグビー選手の1人だった。

夢トラの始まり

木村貴大と初めてのコンタクトは2019年9月17日、ちょうど「夢トラ」の2ヶ月前。 日本とニュージーランドを繋いだテレビ電話だった。

その後、何度か連絡をとり、初めて会ったのは10月18日の夕方、品川のカフェだった。 屈託のない笑顔、身体中から感じるポジティブなエネルギー、夢を語る姿、些細なことにも伝え てくれる感謝の言葉… その時から私は、ラグビー選手としてではなく、単純に1人の人間として、そして友人として木村 貴大に魅了された。

そんな木村貴大がサンウルブズのトレーニングスコッドとして、チームに帯同し、1月30日に正ス コッドに昇格を果たした。

そして、2月15日秩父宮ラグビー場で行われるチーフス戦の試合登録メンバーに名を連ねた。

それはまさに2023年フランスワールドカップ出場を目指す木村貴大にとって「夢トラ」の始まり を告げる瞬間のように感じた。

そして私自身も運命のように、その日の試合時間の予定がポッカリあいた。と同時にすぐにチ ケットを手配した。

初めてのラグビー公式戦に変な緊張を感じながら、秩父宮ラグビー場に向かった。

たった半年…

その景色は圧巻だった。
18708人が集まった秩父宮ラグビー場。 プレーごとに地鳴りのように湧く歓声と敵味方関係なく、素晴らしいプレーの後に送られる拍手

「これがラグビーか…」

もちろんワールドカップ後のラグビー人気も影響があるのだと思う。ただ、これまで様々なスポー ツを現地で観戦してきた中で、このラグビーの衝撃は一生忘れることはないと思う。

そんな中に出番を待つ木村貴大がいた。 試合は早々にサンウルブズがトライ。しかし、その後はチーフスが試合を優勢に進めた。

試合の展開と共に、木村貴大の出番がいつくるか。 試合が進むとともに、妙な緊張感が私を襲った。

そしてついに後半残り5分のところで木村貴大が呼ばれた。

秩父宮ラグビー場に「木村貴大」の名前がコールされた時、思わず涙ぐむ自分がいた。 彼と出会ってたった半年…

「夢トラ」などを通じて、木村貴大から私は多くのことを感じ、学び、自分の人生において様々な きっかけをくれた。

たった半年…

それでも刻んできた様々なページがフラッシュバックした瞬間だった。

しかし、はっきりいって試合の中で木村貴大が何か爪痕を残せたのか…と問われれば、そうでは ない。試合もサンウルブズは私の目から見ても完敗だったと感じる。 出場時間もわずか5分ほどだった。

何より、試合後に会場を回り、ファンの声援に答える木村貴大の表情がその悔しさを物語ってい た。 その表情を見た時に、持っていたカメラのシャッターを切る自分がいた。

私にとって、初めて現場でラグビーを観戦するきっかけとなった試合。 そして、木村貴大にとっては2023年のフランスW杯を目指すための1歩目となった試合。

入り混じる私の感情の中で、時間が立つにつれ、その悔しさをしっかりと自分自身にも刻みたい と感じた。木村貴大がくれたラグビーを現地観戦するきっかけ…そして同じ時間を共有するきっか けをくれたからこそ、感じる悔しさを共有できる自分でありたいと…

これはここから高い頂を目指す木村貴大の「夢へのトライ」のスタートライン。 2月15日はその最初の1歩目を踏み出したに過ぎない。

「いつか、必ず…」

目指す舞台で輝くために。

そして、いつか「初めてラグビーを見たのは…木村貴大のサンウルブズでの試合だった。」 そんなことを笑って話せる未来を楽しみにしている。

木村貴大の「夢へのトライ」 まだまだ続く、その先へ…

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