2020年12月12日13日 アリーナ立川立飛にて、20-21シーズン第13節
アルバルク東京VSサンロッカーズ渋谷 が行われた。
今季初の東京ダービーを、ExtraPassPodCastレギュラーであるしんたろうが、スタッツと戦略の面から深く分析していきたいと思う。
※写真はmarie(@Runs24)さんからご提供頂きました。
GAME1 あらすじ
簡単なスタッツは以下の通り
東京 | 渋谷 | |
3FG決定率 | 32% | 17% |
2FG決定率 | 47% | 52% |
FT決定率 | 73% | 91% |
eFG% | 47% | 45% |
ORB獲得率 | 28% | 35% |
DRB獲得率 | 65% | 72% |
AST割合 | 73% | 40% |
TOV割合 | 17% | 17% |
ポゼッション | 72 |
アルバルク東京はオンザコート1でのスタート
渋谷は渡辺選手をスターター起用して、3ガード体制で試合に臨む
東京は安定のハイピックから、逆サイドヘルプを釣り出しキックアウト3を狙うも開幕2本連続で失敗。
渋谷はジャクソンのスクリーンを上手く使った2ptのオフェンスが共に失敗し我慢の幕開けとなった。
渋谷は3ガードでハンドラーへ徹底したボールプレッシャー、
東京もIceDFやファイトオーバー、ポストWチームを駆使しながらアウトナンバーを作らせない。
互いに持ち味を発揮した序盤となった。
しかし流石にターンオーバーや攻めに焦りが見られない東京に対し、渋谷は早々に開始3分で3ガードを捨てる。
渋谷のハードヘッジからヘルプDFの間隙をつきながら効率よくスコアするアルバルクが3点のリードで2Qへ
2Qは渋谷がウィークサイドDFがヘルプに入り、ソフトヘッジするように修正。
東京のオープン3が決まり始めたところでタイムアウト。
東京はヘッジDFの戻りをフレアスクリーンで妨害しつつギャップを作る。
東京のターンオーバーから連続得点とテクニカルファウルで渋谷逆転に成功。
渋谷1点リードで前半を折り返す。
渋谷は3ガードで後半に臨む。
東京は渋谷のゾーンプレスに苦しむ展開。
渋谷のオフェンスリバウンドからのスコア、東京のハイピックと持ち味を見せながら1pos差で最終Qへ。
4Qも3Qに引き続き守り合う展開。
交代した選手にルカHCが長い時間をかけて話をしているシーンが印象的だった。
東京はボックスアウトのタイミングが1テンポ遅れが出てしまっており、
渋谷マカドゥのオフェンスリバウンドが止められない。
逆に渋谷は、トップへのヘッジDFをブリッツ気味に強化。一瞬オープンになるフロントコートプレイヤーへのパス供給からスコアされる展開が続く。
カークと安藤の鉄板ハイピックをマカドゥのヘッジで凌ぎ切り、
渋谷は返しで連続スコアで5点差としたところで東京タイムアウト。
安藤値千金の3ポイントで残り9秒同点とするも、返しの渋谷、ケリーがフリースローを沈めそのまま試合終了となった。
ショット決定率が低いチームが勝利するという珍しい結果となったこのゲームは、
上にある通り渋谷のOR獲得率35%が大きいと感じた。
純粋な攻撃回数で5回の差が出てしまっては決定率の差を覆すには充分だったように思う。
GAME2 第1クォーター
絶対に負けられない東京、ルカHCと伊佐HCとのチェスゲームに注目したい。
スターターは
東京:安藤 誓哉 菊地 祥平 竹内 譲次 田中 大貴 アレックス・カーク
渋谷:関野 剛平 ベンドラメ 礼生 チャールズ・ジャクソン 渡辺 竜之佑 ライアン・ケリー
1Qにおけるショットチャートとセットオフェンス内訳は以下の通り。
■セットフェンス内訳
【東京】
ピック&ロール エントリーセット 9回
(PnR-backdoor, Cross-Veer, Ram)
ハンドオフエントリーセット 5回
(Flip-Twist, DHO-PnR)
その他 2回
(WheelAction, Zipper-Chase)
【渋谷】
ピック&ロール エントリーセット 4回
ハンドオフエントリーセット 2回
(HO-Pin, Flip)
Hornsセット 5回
(Horns-45,Horns-Chicago, Horns-Flex,Horns-Oklahoma)
Post-Split 2回
その他 2回
(Throw back, Chicago-Chase)
ゲームは田中・カークのPnRからスタート。渋谷はヘッジDFが昨日よりも明らかに小さく、弱点であるロールマンへの展開を警戒したプランを取り、さらにウイークサイドDFがペイントエリアまで入ってヘルプすることでインサイドケアを強く意識したDF戦略を取る。
このDFが奏功し開始2分を2得点で抑えることに成功。
それを見た東京は、渋谷のゾーンプレスを掻い潜り、渋谷のヘルプDF→ローテーションのミスを突いて3pt。小さくなったヘッジDFを逆手に取り、リトリート→ドライブインで加点し素早く修正する。
守っては、ICEと昨日よりもさらに下がるドロップDFでボールピックからの2メンゲームに対応し、ズレからのインサイド2on1やキックアウト3シチュエーションを潰していく。
対する渋谷のオフェンスは、Hornsセットを多用しながらジャクソン・ケリーのエルボーピックやハンドオフからインサイドの得点を狙うこれまでとは違ったオフェンスを展開しつつ、東京のドロップDFに対して制限エリアまでDFを下がらせてゴール下での真っ向勝負を選択。
カークが交代すれば渋谷もジャクソンを下げるベンチワークも真っ向勝負となっていた。
重い展開を打破するために東京は小酒部・小島を投入。先述の流れと同様にリトリートドライブでDFをかわし小酒部が得点し作戦成功。
引いて守る相手に攻め手が乏しい渋谷はタイムアウトで攻守の調整を行なったが、タイムアウト後のフルコートプレスDFを読んだ東京は、早いパスでかいくぐり小酒部のレイアップが成功。
ピックにはかけられるものの、その一瞬のズレを突いてビッグマンへパスを出せず苦しいオフェンスが続く渋谷は、2分で6得点を献上しジリジリと点差を離されて11点差で1Qを終えた。
GAME 第2クオーター
2Qにおけるショットチャートとセットオフェンス内訳は以下の通り。
■セットフェンス内訳
【東京】
ピック&ロール エントリーセット 4回
(FistMiami, Drag, Ram)
ハンドオフエントリーセット 5回
(Flip-Twist, DHO-Ram)
その他 4回
(Floppy, Zipper-Chase, Circle-Chase)
【渋谷】
ピック&ロール エントリーセット 6回
(SpainPnR, Drag, Ram, PnP-ElbowHO)
ハンドオフエントリーセット 2回
(Flip-Twist, HO-Thunder)
Hornsセット 3回
(HornsHorns-Backdoor, Horns-Flex,Horns-Oklahoma)
その他 3回
(Chicago, Flex, Floppy(-Chase))
2Q東京はハンドオフを繰り返すWeavingからスタートする意外な入り方。
対する渋谷はSpainPnRでお互いにスコアする。
渋谷伊佐HCはオールコートのゾーンプレスを要所で使う戦略に切り替えた。
カーク・田中のフレアスクリーンをベンドラメがスティールするなど、渋谷DFが徐々に機能し始める。
アーリーオフェンスからジャクソンがスコアすると即座に流れを切るタイムアウト。
タイムアウト明け、東京はハイピックで攻めるも渋谷の2線目のヘルプが機能しスコアできず。逆にまたしても渋谷のSpainPnRからケリー選手のAnd1が決まり流れはまだ渋谷。
小島・小酒部のコーナー3と渋谷のハイピックで点を取り合う展開に。
点差が動いたのは残り1分30秒、ジョーンズのセカンドチャンスポイントと、小酒部のペネトレイションから小島のコーナー3が決まり2桁点差へ。
渋谷前半最後のタイムアウトをとり、ヘルプのタイミングを修正。田中が3ptラインに侵入したタイミングでウィークサイドコーナーのライアンケリーがヘルプDF。キックアウトを(X-out)ローテーションで対応。返すオフェンスではケリーのアイソレーションからスコアは叶わずアルバルク10点リードで折り返した。
GAME 第3クオーター
3Qにおけるショットチャートとセットオフェンス内訳は以下の通り。
■セットフェンス内訳
【東京】
ピック&ロールエントリーセット 6回
(ボールスクリーンモーション,Ram)
ハンドオフエントリーセット 2回
(HO-PnR, DHO-PnR)
【渋谷】
ピック&ロール エントリーセット 7回
(Elbow Fist,SpainPnR, ボールスクリーンモーション)
その他 6回
(Away, Flex, Zipper-Chase)
スターターに戻して渋谷ボールの後半開始。ライアンケリーのピック&ポップから3ptを試投。2Qに1本の試投だった3ptを積極的に使っていく。
これはドロップ(ソフトヘッジ,コンテイン)で守る東京に対する伊佐HCの回答に見えた。
対して東京は、渋谷の前がかりなディフェンスをパスで躱しアウトナンバーを作る1ゲーム目の戦略へシフト。
リードされた後半、よりハード(前がかり)なヘッジDFになることを予想したルカHCのゲームプランだったように思われる。
小さいヘッジの場合には、ドライブで。前がかりになった瞬間にロールマンへパス供給しながら徐々に東京は渋谷DFを手玉に取り始める。
(3Q残り6分ごろのオフェンスが象徴的)
渋谷もピック&ポップから3ptやハイロープレイを見せ10点差で食らいついていくが、タイムアウト明け3Q残り1:30から、スクリーンの下を通るアンダーDFを渋谷が選択したことによりギャップを作った安藤の3ptが決まる。
残り10秒でこの日絶好調の小酒部がコーナー3を決め点差を16点と広げた
GAME 第4クオーター
■セットフェンス内訳
【東京】
ピック&ロールエントリーセット 6回
(ボールスクリーンモーション)
ハンドオフエントリーセット 2回
(HO-PnR, HO-Chase)
【渋谷】
ピック&ロール エントリーセット 5回
(Drag, PnP,ボールスクリーンモーション)
ハンドオフエントリーセット 2回
(HO-PnR, Flip-Cross)
その他 1回
(AI-Rip-StS)
点差がついて始まった最終クオーター。
渋谷(伊佐HC)は賭けに出る。
ローポスト(ドリブルをついた瞬間に)ダブルチーム、高い位置にいるガードへダブルチーム、
ポゼッションが変わればゾーンプレスDFを駆使しながらスティールとペースアップを狙う。
しかしこの日の東京には通用しなかった。
スペーシングからオープンな選手へパスを供給し効率よく加点。
守っては、徹底されていたICEとドロップ→レイトスイッチで攻撃に時間をかけさせる、
いわゆる東京のバスケットで盤石なゲーム運び。
開始3分で点差を20に広げる。
試合終盤には、ギアをあげた東京のディナイDFが渋谷のバックコートにハンドオフすら許さない。
デショントーマスの3連続3ptが駄目押しとなり試合終了となった。
最終スタッツ
東京 | 渋谷 | |
3FG決定率 | 53% | 28% |
2FG決定率 | 49% | 52% |
FT決定率 | 67% | 69% |
eFG% | 62% | 49% |
2pt試投割合 | 52% | 67% |
3pt試投割合 | 36% | 23% |
2pt得点割合 | 40% | 68% |
ペリメタ得点割合 | 6% | 8% |
3pt得点割合 | 46% | 19% |
FT得点割合 | 13% | 14% |
FT獲得率 | 29% | 23% |
PitP割合 | 35% | 60% |
SCP割合 | 15% | 16% |
FBP割合 | 2% | 14% |
PfT割合 | 13% | 14% |
ORB獲得率 | 47% | 33% |
DRB獲得率 | 68% | 53% |
AST割合 | 56% | 44% |
TOV割合 | 14% | 15% |
ポゼッション | 74 |
東京の驚異的なオフェンスリバウンド獲得率。
記者会見(Zoom)
※しんたろう質問部分抜粋
Zoomによる記者会見。
この日私がやってしまった失態も忠実に再現しています。
【私の顔アップで記者会見開幕】
広報ご担当「すみません、カメラとマイクはオフでお願い致します。」
しんたろう「(忘れてた;;)」
【伊佐勉HC】
伊佐HC「ゲームの入りからアルバルクさんのフィジカルなゲームについていけなかったのかなと思います。流石のチャンピオンチームでフィジカルもメンタルもしっかり整っていて、そこは見習わないとアルバルクの上にはいけないなと改めて思いましたのでとても勉強になりました」
広報ご担当「ではご質問のある方、チャットへご記入をお願いいたします」
しんたろう「(チャ、チャット!?口頭じゃない!?
どどうしよう,他の記者さんの質問がどんどん書き込まれていく〜急げ急げー)」
しんたろうのチャット「1ドロップで引いてまもられた時のオフェンスバリエーションはどうしますか?」
伊佐HC「???もう一回お願いします。
~~~~広報ご担当の方が繰り返す~~~~~~~
……..そこについてはアジャストが必要で今日も色々ためしましたけれどもフィジカルで負けていてもうちょっと強固にしないといけないかなと思います」
しんたろう「(なんだこの文章は!訂正する時間はない!伊佐HC見なかったことにしてください(泣) つ、次の質問こそ!)」
しんたろうのチャット「3QにドロップDFをした理由をお聞かせください」
伊佐HC「ドロップDF??なんですか??」
しんたろう「(誤字ったーー!訂正、訂正急げ)」
しんたろうのチャット「間違いでした、アンダーです」
伊佐HC「アンダーのことをドロップDFと言うんですね。」
しんたろう「(誤字です;;間違いです;;)」
伊佐HC「オフェンスに関して対応されていましたので、うちも5ゲーム目でスタミナとかフィジカルコンディションの状態を見て少し休みながらやったんですけども、そこは流石の安藤選手とかすぐ見極めて、いいショットを打たれていたので対応されたかなと思います」
【ルカ・パヴィチェヴィッチHC】
「昨日の敗戦からチーム全体でトランジション、セカンドチャンスを抑えるかがキーポイントだった。そこが勝ちにつながった。
オフェンスも効果的だった。いいスペースでドライブすること、PnR,合わせがしっかりとできていた。リングにドライブすることペイントをアタックすることは常に我々のチームで話している一つのポイント。特に出だしで主導権を握ることができた。渋谷に関してはやはりフィジカルなチーム。我々もフィジカルでは負けないと言う自負がありますので、このシリーズ通してエネルギー、フィジカル面、ハードに戦うこと、これが一つのカギになりました。今日は我々らしかった。昨日の負けを上回ることができたと感じている」
※しんたろうの質問は時間の都合でカットになりました。
【小酒部泰暉選手】
「昨日は負けてしまって、ディフェンスから入ろうとチームで決めていて、1Qはディフェンスから入れて、いい流れで11点差と言う結果が出た。そのままいい流れでいければと思った。10点差前後が続いて、終盤に点差を離せたので、OF/DF共によかった」
しんたろうのチャット「ゲームメイクをしていた時間帯に意識していたことは?」
小酒部選手「やはり1番はミスをせずに繋げることを常に考えていた」
【ライアンケリー選手】
「今日の試合を振り返って、戦うと言うところが重要。素晴らしいチームに対して、戦い抜くことができなかった。ゲーム開始から望むようなスタートがきれなかった。そのまま試合が動いてしまった。2試合続けて全力でプレイをして結果、自分たちよりも”TOYOTA”の方が勝ちたいと言う思いが強かったように思う」
しんたろうのチャット「第4クウォーターにポップアウトから良い3がありました。引いて守ってくる相手に意識したことはありますか」
ライアンケリー選手「オフェンスに関していえば、もっと早い段階で決められればと言う悔しい思い。前半は打てるチャンスも少なかった。後半はチームメイトが自分を見つけてくれて、オープンショットのシチュエーションが増えたのが、チームがビハインドになった理由は自分のショットが入らなかったところだと残念に思っている」
【田中大貴選手】
「チームディフェンスの強度が高かったと思う。昨日も最後に負け、きつい状況が続いていたが、今日は負けられないと言うところでエネルギーを出して戦うことができた試合だった」
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