※こちらの記事は宮本將廣のnote「沖縄アリーナ観戦記②」からの転載記事になります。内容は同じです。
先日、更新した「沖縄アリーナ観戦記」が想像以上にご好評いただいた。皆様本当にありがとうございます。まだ読んでない人はこちらから
そして、それは私は4月21日の現地観戦で感じたほんの一部分。
今回は、その続編として、もう少し踏み込んだ部分を「沖縄アリーナ観戦記②」として書いていきたい。
この「沖縄アリーナ観戦記」はあくまでの現地で感じた私の体験、感想の共有であり、取材記事などではない。そちらだけご理解をいただきたい。
前回の振り返り
前回は私が沖縄に足を運ぼうと思ったきっかけをいただいた2人の方のご紹介、アリーナ最上段からの熱狂、女性トイレの凄さなどを書かせてもらった。本当に感動ばかりだった。
今回は少し試合中のことなども書かせてもらいたい。
その前に、今回もご紹介したい方がいる。numberなどで記事を書かれていて、サッカーやバスケットボールで様々な著書も出版されているミムラユウスケさん。
沖縄アリーナについての記事はまさに必読。
まだ読まれたことのない方はぜひ、こちらも合わせてお読みいただきたい。
また、私は元々サッカーが大好きで、スポーツ業界に興味を持ちました。そんな中でドイツブンデスリーガなど、ミムラユウスケさんの記事を読んで見識を広げてきた。
そんなミムラユウスケさんが構成で携わった香川真司選手の書籍
「心が震えるか、否か」
が4月7日に発売され、もう私は読みながら、心が震えまくっている。
沖縄での試合の取材にいらしていたミムラさんとお話しをできたことも、私に取ってこれ以上ない時間だった。
ぜひこちらもおすすめですので、手に取ってみていただけたらと思う。
沖縄の人はバスケを知っている。
私は沖縄で初めてバスケットボールを観戦した。
事前情報として、「沖縄の人はバスケを知っている。」という様々なところで聞く情報やファン・ブースターの発信で私も感じていたし、何よりも配信などでもそれを感じとることができる。
この配信で感じ取れることがものすごいことだと私は思っている。
私は今、Bリーグは2通りのパターンがあると考えていて、これはどちらがいいとか悪いとかではなく、目指すべき方向は同じありつつ、現状との兼ね合い、地域性(スポーツとの関係性)など様々な要素があると思う。
その2通りのパターンが(あくまで私の感じ方)
- エンターテインメントを追求しながらバスケットボールを根付かせていこう
- バスケットボールを最高のエンターテイメントにしよう
という2パターンだ。
現状、バスケットボールは第3のプロスポーツとして、右肩上がりに成長をし、コロナ禍で苦しい中でも奮闘するBリーグですが、まだまだ露出も多いわけではなく、その影響力が大きいとは言えないのがリアルだと思う。
私の地元の北海道もBリーグでは、人気クラブとしてのその地位を確立している印象だが、北海道ではその知名度は正直全然と言える。
実際、昨シーズンベースで約4000人の平均来場者数だが、北海道の人口が約550万人なので、人口比は1375人あたり1人が観戦に訪れるイメージ。(もちろん北海道が広いので、みんながきたえ〜るにいけるわけではないので、ざっくりとしたイメージ)
では、沖縄はどうだろうか?
沖縄の人口が約146万人であり、昨シーズンベースの平均来場者数が、約3200人だ。
単純計算で456人に1人が観戦に訪れるイメージだ。
そして、沖縄アリーナの初戦はチケットは完売で3500人を超えた。そもそも沖縄市体育館のチケットはプレミアチケット化していたことも考えると、コロナが明ければ、来場者数1位も普通に見えると思う。
例えば、平均が5000人で考えても(多分もっと入ると思う)、単純計算で292人に1人が来場することになる。
要するに、既にある程度バスケットボールが根付いていると感じられる地域と、これからバスケットボールを根付かせていこうと思っている地域では、当たり前だが、その施策は違い、沖縄、琉球ゴールデンキングスはその視点では前者であり、北海道とはフェーズが違うわけである。
それは現地に足を運んで、その空気感だけで感じとることができたし、ファン・ブースターと会話をする、試合での反応、リアクションでもものすごい感じたし、正直にいうと…
これがバスケットボールか…と感じてしまった。
そういう感覚は他の会場でも感じたことがある。
しかし、それをも超える体験だった。
実際、エンタメがすごーい!と感じる会場はある。
しかし、バスケットボールだ…という感覚を感じることは少ない。
それは何度もいうがその地域のフェーズの問題だ。
その中で、沖縄アリーナはすごかった。そして、その中には何も話さずとも
「バスケを知っている。」
そんなファン・ブースターが醸し出す空気感もそれを作り出している。
これはリアルでしか体感できない。
私はそれを
これが日本のバスケットボールだ。
と表現した。それはこんなバスケットボールの景色が日本にもあるということ、そしてそれがきっとこれから全国の様々な場所で日常になっていくということ。
そうなってほしいと心から思ったし、と同時に沖縄のように、バスケをもっと日常にしていく必要性、バスケをもっと知っていく必要性もあるのだと感じた。
バスケをもっと知っていく必要性
実は私はバスケをもっと知っていく必要性を数年前から発信している。
正直に言えば、それを発信する中で、誹謗中傷のようなことも受けたことがある。
けれど、沖縄アリーナのバスケットボールを体感して、それは確信に変わった。
前回、「上から演出の音楽が落ちてきて、そして下からはバスケットボールの音が響いてくる。」と書いた。
ハード面が変わったことで、バスケットボールの見え方、聞こえ方が変わったことは間違いない。
しかし、それ以上にそれがオーバースペックだったら、いいハード面も生かされない。そこは絶対に相関関係にある。
要するにいいハードをより生かすためには、そこにいるファン・ブースターがその環境を最大限に楽しむ(生かす)必要があると私は思う。
そういう意味で、既にバスケットボールへの理解が深い沖縄の皆さんは、この環境を最大限に楽しんでいたし、そのメインディッシュがバスケットボールであることを理解していると感じずにはいられなかった。
具体的なシーンを挙げると、2Qの残り9分17秒のシーンで、船生選手が小林選手のボールをつつき、ディフェンスのギアを上げて、素晴らしいボールマンプレッシャーをかけ、小林選手を孤立させて、名古屋に悪いオフェンスをさせたシーンがあった。
違う記事でも、琉球の選手が「沖縄のみなさんはバスケを知っているからいいディフェンスでも拍手が起こる」などのコメントがよく出る。
しかし、現地で初めて観戦をして、ファン・ブースターの力がそれだけではなかったことを私は知った。
もちろん、その船生選手のディフェンスのシーンで確かに拍手が沸き起こり、なるほど…と私も感じた。しかし、それだけではなかった。
このシーンを振り得ると、27-23で琉球がリードしていたが、どこから流れを掴めないぼんやりとしたバスケットボールが続いていた。
おそらくそこに船生選手は気づいていて、1つの勝負どころだと感じていたのだと思う。バスケットボールは流れのスポーツなので、ずるずるいくと流れを掴み損ねて、迷路に入ってしまう時がある。ボールを突いて、ルーズになったことをきっかけに、船生選手はここだ!と言わんばかりにギアを上げたのだと思う。
その理由は、必ずそのギアチェンジにアリーナが共鳴するからである。
実際、そこでかなりの拍手が沸き起った。そして、それ以上に会場の空気感が変わったのだ。私はそこに鳥肌が立った。
アリーナ全体が「このオフェンス大事だぞ!」と言わんばかりに1段ギアが上がったのだ。
そして、そのオフェンスがターンオーバーになる。
おそらく、このオフェンスを成功して入れば、ここから琉球ペースになり、この試合を勝利したように思う。
かなり何気ないシーンだったが、試合を分ける場面だったと思う。
そして、それ以上に盛り上がりそうなシーンはたくさんあった。岸本選手のディープスリーなども何本か決まったり、今村選手がハーフコートからブザービーターを決めた。
もちろん会場は盛り上がったが、どこかそれは終わったこと。というような、ワー!っと沸いたあとに試合に向き合う空気感があった。
他会場であれば、その後もざわざわするようなシーンだと思う。
しかし、琉球はそれが試合の流れを変えるほどのビッグショットではないことを理解している。いわゆるバスケットボールを知っている。という場面だ。
しかし、この船生選手のディフェンスからオフェンスのシーンは間違いなくこの試合のトリガーだった。
その空気感の変化はリアルの現場でしか感じられない。
応援も含めて、すごく陽気な感じ、相手のナイスプレーにも拍手を送るアリーナが、その瞬間はピンと張り詰めたシーンだった。
これを感じた時、やっぱりバスケを知っていく必要性があるな…と強く感じた。
もちろんバスケは色んな楽しみ方がある。それは自由であり、強制されるものではない。私も、バスケ知らないとだめとは全く思わないし、決してそこを勘違いしてほしくはない。沖縄のバスケファンもそれぞれの楽しみ方をしていた。
しかし、この勝負どころだけは全員勝負に徹していた。
そう、勝負どころを理解しているのだ。
だからこそ、どこか敗戦しても清々しい。もちろん初の沖縄アリーナの公式戦だったからかもしれない。それでも、まー、しょうがないようね。だってあのシーンで流れ掴めなかったし。という感じや、名古屋があそこ良かったからね。というような言葉をちらほら聞いた。
繰り返すがバスケットボールは流れのスポーツだ。
その流れを掴むことで、ショットの成功率も変わってくると思う。
その流れが来たときに1番ボルテージが上がるのが琉球のアリーナなのだと、五感全てで体感した。
それは強いわけだ。そしてそんな空気感を感じれば、自ずと「ここが勝負どころだ!」と理解できる。私はよく共鳴という言葉を使うが、シーソーゲームの終盤は黙っていてもそうなる。しかし、この試合の途中の流れの攻防では初めての体験だった。
さらっと最後に岸本選手がスリーを決めて同点になったのも、そんな目で見られているからこそだと思う。
取れる流れをとれなかった以上、このショットは決めなくてはいけない。
そういう環境の中でプレーをしていれば、あれがタフショットではなくなるのだと思う。
「そりゃ、強いわ。」
これが私の率直な感想だった。
このアリーナはどんな共鳴を作るのか。
さて、今回もだいぶ長くなってきたので、一旦ここで終わりにしたいと思う。
本当に素晴らしい経験だった。
価値観が変わったというのは大袈裟ではないし、そこにはスポーツ、バスケットボールの本質があった。
流れを掴めなければ、勝つことは難しいこと。
最後に勝利をするために、それまでの攻防が大切なこと。
そして何より、勝敗は保証されていないこと。
負ける理由を理解できれば、必要以上にフラストレーションはたまらない。
意見も明確になるし、感情論にはなりにくい。
誰もが勝利を見たくて会場に行き、応援をするが、それは絶対に得られるものではない。
だからこそ、今、スポーツ業界は勝敗に左右されない非日常的な空間を提供できるように努力をしているが、それだけでなく、間違いなく私たちファン・ブースター側にも積み上げなくてはいけないものがある。
なぜなら、お客さんであるが、私たちもバスケットボールの構成要素の1つであり、かなりの比重の影響力があるからだ。
キングスには、クラブのカルチャー、そしてこれ以上ないアリーナも完成した。
その中で、今まで以上の、他のクラブにないそれらとファン・ブースターの共鳴がいかに生まれるか?それはどんなものだろうか?
本当に興味しかないし、可能ならば、その瞬間を現地で体感したい。
きっとそれはリーグ制覇の鍵を握る1つでもあると思うし、新たなカルチャーとして、歴史に積み上げられるような気がしている。
なぜなら、既にその共鳴を起こせるファン・ブースターがそこにいるからだ。
これ以上すごくなるのか…これ以上強くなるのか…
と考えたら、北海道ブースターとしてはもはや恐怖だ。笑
しかし、このアリーナが見せてくれる沖縄、琉球のバスケットボールはもはや日本の未来でもあるのだと、現地で私は感じた。