2020年11月14日15日 青山学院記念館にて、20-21シーズン第9節
サンロッカーズ渋谷 VS 名古屋ダイヤモンドドルフィンズが行われた。
11月14日の結果で奇しくも勝敗が並んだ両チーム。
勢いがある渋谷と3ptチームの名古屋との好ゲームを、
今回もExtraPassPodCast準レギュラーであるしんたろうが、スタッツと戦略の面から深く分析していきたいと思う。
※写真はmarie(@Runs24)さんからご提供頂きました。
GAME1 あらすじ
簡単なスタッツは以下の通り
渋谷 | 名古屋 | |
3FG決定率 | 24% | 48% |
2FG決定率 | 60% | 56% |
FT決定率 | 90% | 47% |
eFG% | 51% | 61% |
ORB獲得率 | 32% | 42% |
DRB獲得率 | 58% | 68% |
AST割合 | 25% | 44% |
TOV割合 | 15% | 28% |
ポゼッション | 76 |
試合開始から、お互いにローテーションのミスマッチを突き合うパッシングオフェンスを展開していたが、1Q残り5分から展開が激変する。
名古屋の2on1へ誘い込むソフトヘッジ→ローテーションにより、渋谷はボールがペイントへ進まない。逆に渋谷得意のハードヘッジ→インサイドヘルプに対してコーナーのスキップパスを駆使しながら3ptを決める名古屋は17-4のランで1Qを終えた。2QもDFが崩せない渋谷は21点差の大量ビハインドでハーフタイムを迎えることとなる。
3Qから試合展開はまた激変する。
ヘッジの出方を少なくし、戻りを重視しながら、ヘルプDFに入るタイミングを明確に早めた渋谷がスティールを量産。トランジションを重視、ポストアップ中心からドライブ中心の戦略へ変更し3ptを含めたペリメタ以遠の決定率が上昇。
3分間で13-0のランで流れを作りそのまま勝利。
特に4Qは7本のTOVを喫した名古屋が悔しい敗戦となった。
直接の原因はTOVだと思われがちだが、渋谷は名古屋の28TOVから20得点しか取れておらず 0.74pts / TOVとなるため致命的な要因ではなかった。
問題は 3ptより低いFT47%であり4Q 2/6 の4点差がそのまま結果に繋がってしまった
GAME2 第1クォーター
いい流れで臨む渋谷、絶対に負けられない名古屋。
渋谷DF攻略の1手はあるか注目したい。
スターターは
渋谷:関野 剛平 ベンドラメ 礼生 チャールズ・ジャクソン 石井 講祐 ライアン・ケリー
名古屋:齋藤 拓実 ジェフ・エアーズ 安藤 周人 ジャスティン・バーレル 狩野 祐介
1Qにおけるショットチャートとセットオフェンス内訳は以下の通り。
■セットフェンス内訳
【渋谷】
Runner 1回
Novak 1回
Horns LA 1回
Floppy 1回
Spain 2回
HO-Get 1回
Drag-Cross 1回
Flex 1回
Zipper – Fist 1回
Cross – Strong 1回
Twist 1回
Zip Chase 1回
その他ボールスクリーンモーション 1回
【名古屋】
Horns Away 1回
Away – Get 1回
Away 1回
Floppy – Ram – Flip 1回
Drag 1回
アーリーセット 1回
Zipper – Chase 1回
その他ボールスクリーンモーション 5 回
渋谷のオフェンスは、ベースライン側で3人がスクリーンを掛け合う得意のSwing系のオフェンスでスタート。チャールズジャクソンのオフェンスリバウンドから幸先よく先取点を奪う。
対する名古屋はエースPGのハイピックモーションから開始。互いに得意なムーブでスタートを切った。
渋谷は名古屋のドロップディフェンスに対し、ベンドラメ・関野・ケリーが一歩ハンドラーに寄ったDFの隙をつくドライブで攻勢を仕掛ける。
しかしながらオフェンスリバウンドからのショットを含め、
開始4分で制限区域エリアが 3/6の決定率と不穏な空気が漂う。
対する名古屋は、渋谷の(ブリッツにも近い)ハードヘッジを斎藤のドライブで崩せないと見るや、梶山HCは早々に笹山を投入。
パスで崩す戦略へ変更した。
この瞬間から、笹山・エアーズのホットラインが火を吹き始める。
渋谷のハードヘッジが一瞬のノーマークを作るや否や、エアーズに絶妙なパス供給を始める。ストレートに、ロブ気味に、ウイングの味方を経由し所謂ChangeAngleでパスを受けたエアーズは得点を量産。勿論そのパスはバーレルにも向かい、2人でゴール下を8割決め大量25点を奪いクオーターを締めた。
この間渋谷は何と無得点。
ゴール下やペイントエリアでいい形のショットを打つも、取り憑かれたかのようにショットが外れ、ペイントエリア4 /14(ゴール下 3/ 10含む)と3割を切る決定率で8得点に終わった。
GAME 第2クオーター
2Qにおけるショットチャートとセットオフェンス内訳は以下の通り。
■セットフェンス内訳
【渋谷】
Horns Dive 2回
Zipper – Fist 1回
Stagger – Twist 1回
HO-Get 1回
HO – Kansas 2回
Drag – Kansas 1回
Horns 2High 1回
その他ボールスクリーンモーション 7回
【名古屋】
Away – Miami 1回
Chicago1回
Drag 1回
2Qも名古屋は1Q同様、レイトスイッチのタイミングでロブパスを挙げ、ミスマッチを作ればヘルプDFのマークマンがバックドアを仕掛けるなどパスでつなぐオフェンスを展開。
渋谷も点差があるためトランジションゲームを仕掛けるがそのゴール下が入らない苦しい展開。
開始2分30秒、動いたのは渋谷、伊佐HC。
名古屋に対して2−3ゾーン ディフェンスを指示。
シュートチームである名古屋にこのDF指示は賭けであるが、このゾーンは先頭2人のガードが、ペイントエリア以外全てと言う極限まで守備範囲を広げることでギャップからの3ptを防ごうと言うコンセプトであった。
そしてこのディフェンスが名古屋に刺さる事になる。
このクオーターの名古屋はスペーシングに難があった。
2−3に対してはハイポストからローポストへのパス供給、所謂ハイローがセオリーだが、2人のビッグマンが同時にローポストやミドルポストにポジショニングしていたり、ギャップをドライブしてもビッグマンがペイントにいるために渋滞し、空いているコーナーへキックアウトしても、先頭にいたはずのベンドラメがコーナーまで走りこんでコンテストされる。と言う循環にはまり1Qの半分以下である12点を得るに終わった。
対する渋谷は名古屋のリズムが整わない隙に、ベテラン広瀬を筆頭にドライブ攻勢とミッドレンジゲームを使い分け17点を獲得し12点差で折り返すことに成功。
GAME 第3クオーター
2Qにおけるショットチャートとセットオフェンス内訳は以下の通り。
■セットフェンス内訳
【渋谷】
Miami – Veer – Strong 1回
AI – Chase 1回
Drag 2回
Horns Flex Triple 1回
Miami 1回
Flip Novak 1回
Flex 1回
Horns Flare 2回
Zipper – Chase 1回
Zipper – Fist 1回
Flip – Ram – Sts 1回
Floppy 1回
Pistol 1回
その他ボールスクリーンモーション 4回
【名古屋】
Horns Away – Get 1回
Chicago1回
Away (Slip) 1回
その他ボールスクリーンモーション 1回
後半、渋谷は開始早々にこの日チーム2本目の3ptを決め幸先良いスタートを切った。ディフェンスは効果的であったゾーンを止め、マンツーマンで開始。
その動きをみて1Q同様ヘッジの隙にパス供給を開始する名古屋。
外国籍選手のファウルトラブルもあり、安藤にスリップで躱されスコアされたプレイをみてゾーンDFへ変更した。
対する名古屋は梶山HCからゾーンオフェンスへの修正が入る。
ライオンズをウイングに置き、エアーズをハイポストに配置することで、常にアウトナンバーとギャップへのドライブが可能な布陣(4out)を敷いた。
DFを広げられてしまった渋谷はハイポストへのマークが甘くなり、バーレル・エアーズにキャッチアンドシュートで得点を許し、
ハイポストに寄ればギャップをライオンズやその他ウイングがドライブし2on1を攻められるいう循環に嵌り後手に回り始める。
さらに名古屋は、ドライブに寄った渋谷オフェンスに対してドロップ(コンテイン)とボールマンへもアンダーすることで徹底した対策を講じた。
マカドゥをファウルアウトで欠き上手く攻められない渋谷は、クオーター終盤にはゾーンを敷く前にトランジションオフェンスで攻められ始め、21点ビハインドで4Qを迎えることになった。
GAME 第4クオーター
なんとか事態を打開したい渋谷は、オールコートプレスから
ヘッジを浅めにし、(ビッグマンへのパス供給を防ぐために)かなり早い段階でコーナーDFがヘルプに入るマンツーマンで勝負をかける。
その動きを察知した名古屋は即座に、空いたコーナーの選手やDFローテーションの間にオープンとなった選手、ゾーンアップで守らざるを得ないウィークサイドDFに対しバックドアで飛び込んだ選手へパスを回し始める。
ショットが入らず苦しむ渋谷に対し張本の速攻、笹山が2本連続の3pt、バーレルのアリウープがトドメとなった。
最終スタッツ
渋谷 | 名古屋 | |
3FG決定率 | 23% | 35% |
2FG決定率 | 30% | 53% |
FT決定率 | 91% | 79% |
eFG% | 32% | 53% |
2pt試投割合 | 58% | 59% |
3pt試投割合 | 35% | 29% |
2pt得点割合 | 48% | 54% |
ペリメタ得点割合 | 15% | 5% |
3pt得点割合 | 33% | 27% |
FT得点割合 | 19% | 19% |
FT獲得率 | 16% | 32% |
PitP割合 | 33% | 49% |
SCP割合 | 11% | 10% |
FBP割合 | 11% | 23% |
PfT割合 | 24% | 15% |
ORB獲得率 | 28% | 26% |
DRB獲得率 | 74% | 72% |
AST割合 | 46% | 69% |
TOV割合 | 22% | 20% |
ポゼッション | 74 |
記者会見
しんたろう質問部分抜粋
【梶山信五HC】
「昨日の修正点である、40分間ディフェンスのインテンシティを下げないと言う点については選手達が40分間行ってくれた。勝ちはしたがこの二日間ターンオーバーが多かったのでバイウィークを利用してしっかりチームで危機感を持って練習したい。二日間、ファンの皆様には期待を裏切ってしまいましたが、今日しっかり勝って恩返しが出来たと思います。応援ありがとうございました」
しんたろう「2Q、渋谷のゾーンが始まった際にピックを試みてもペイントが渋滞していたり、ビッグマンが同じ位置にいたり、キックアウトしてもベンドラメ選手にカバーされてしまっていたが、後半はどの様に指示をしたか」
梶山HC「仰られた通り、前半のゾーンオフェンスはスペーシングが悪かった。スペーシングを調整する事、ピックを使いながらまずは自分達の前のギャップアタック、パスばかりを狙っていたので。ドライブして、キックアウト、エクストラパスをする事、そいういう所を意識させた。後半は非常に良かった」
しんたろう「2Q、渋谷がドライブで攻めていたので3Qはアンダーやドロップで対策した様に見えた。4Qはそこからスローバックや逆サイドの3で展開されていた。(確率的に)打たせていた部分はあったか」
梶山HC「ドライブに対しては昨日の反省点としてコンテインを指示していた。今日は上手くいっていた。フォロービハインドのショットを打たせて良いと言うことはなかった。ただ、ウィークサイドのDFが少しレイジーになってしまった。そう言うところの練習が必要。」
【伊佐勉HC】
「あれだけショットを落としてはいくらDFから立て直せたと言っても難しい試合でした。メンバーチェンジしたり、ゾーンに変えたりしましたが、結果的にはどうしようもないゲームでした。完敗というよりは自滅したゲームでした。」
しんたろう「2Qドライブが効いていた。3Qは名古屋DFが対応したがドライブにこだわっていた理由と、4Qに展開して3ptが増えた理由は」
伊佐HC「まずペイントアタックは毎試合こだわっている。ヘルプに寄ってきていた時の判断が昨日から良くなかった。4Q逆サイドへ飛んだのは、全体を見れたのだと思う。特に指示はしていない。」
しんたろう「1Qから2Qにかけてロールマンへパスを7POSくらい通されていた。その後ゾーンにして4Qマンツーに戻し、良いDFをしていたがヘルプの裏を通されていた。今後どのように修正するか」
伊佐HC「ゾーンに変えたのはファウルトラブルとプレッシャーが弱くなったため。スペースがある状態でビッグマンに通されていたのでゾーンでしのいでいた状況。前半は凌ぎきれた」
【野口大介選手】
「今日は追い上げきれない展開だった。そもそもそういう展開になる前に今日は止めようとしたがそこが反省点だった。追い上げる時にDFは何とかできていたがオフェンスの流れはいいが決めきれなかった。そこをやり直して期間が空くので1Qから戦えるようなチームを作りたい」
しんたろう「形はいいがリング周りがどうしても入らない。そういう時に外国籍選手に何か声をかけたり話をしたか」
野口選手「フラストレーションがたまると、逐一フォローしていたが流れがうまくいかない時は自分に溜めてしまう状態なので考え方が閉じこもっていた。
外国籍選手は経験があるので自分で対処法がわかっているはずなので特別なことは言わず次へ向かうように声をかけた」
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