10月28日、ブレックスアリーナ宇都宮で行われたB1 第6節 宇都宮ブレックスとレバンガ北海道の一戦は85-76でホーム宇都宮ブレックスが勝利した。
序盤から宇都宮の激しいディフェンスに対して後手に回った北海道だったが、徐々に追い上げを見せ一時は3点差まで追い詰める展開に。
現在、リーグの得点ランキング1位を走るニック・メイヨはこの日も25得点の活躍。新加入のジョーダン・テイラーも徐々にチームにフィットしていきている。さらに開幕以後欠場が続いていたファイ パプ月瑠もコートに立つなどポジティブな要素も多く見られた。
しかし、B1東地区首位の宇都宮の背中を北海道は最後まで捕らえることはできずに惜敗。開幕10試合を終えて3勝7敗となった。
レバンガ北海道にとって収穫の多い試合
敗戦ながら試合後の記者会見に現れた宮永雄太ヘッドコーチもキャプテンの橋本竜馬も表情に曇りはなく、2人とも「収穫があった」という言葉を口にした。
宮永HCは「自分たちのやりたいバスケットを最初に出せなかったのが少し響きましたが、しっかりとチームルールのディフェンスを遂行しカムバックできたので、チーム作りをしている中で収穫のある試合でした」と語った。
一方、橋本はチームで手応えがあったことを口にする。「入りのところでブレックスさんの強さを感じました。徐々にみんなで対応していって2~4Qは実りのあるものになったので、すごく勉強になりました。強豪チームとやるのは凄く楽しいなと感じましたし、その中でしっかり遂行して相手を苦しめないといけないという課題がしっかり見えた試合でした」。
ペイントタッチの重要性
宮本將廣が配信しているstand.fmの中で、5節の滋賀レイクスターズ戦を振り返りペイントタッチの重要性について言及している。
この日のペイントタッチ数もオフェンスの流れに影響していた。
宇都宮 | 北海道 | |
1Q | 14 | 8 |
2Q | 9 | 13 |
3Q | 14 | 16 |
4Q | 12 | 10 |
(手集計のため若干の誤差はあるかもしれないのでご容赦をm(_ _)m)
1Qは、宇都宮が北海道を大きく上回っている。2Q、3Qは北海道が多く、4Qは宇都宮が多い。
実際、意識してプレーしていたのだろうか。
橋本は「結果の通りにペイントタッチ数が出ていると思うんですけど、1Qはそれぞれが少し消極的になっているなという印象もありました。宇都宮さんのディフェンスがよかったというのはあるんですけど、緩く入っていた印象があったので、もっとプレーしようということを伝えました。」と試合が進む中でのオフェンス構築で意識したことを振り返る。
このペイントタッチ数に関して言えば、テイラーの存在も影響している。
テイラーがアグレッシブにリングに向かうことで、いい展開が作れている場面が何度も見られた。
実際、3Q開始時、テイラーとファイがスタートでコートに立ったことに対して、宇都宮の安齋竜三ヘッドコーチは「テイラー選手がスタートで出てきて、(それに対応する)ガード間のスクリーンの守り方を練習できていなかった。出だしで流れを持っていかれた原因。3Qの失点の多さは改善しなければいけない」と語った。
「前半終わって10点くらい差があり追いかける立場だったので、メンバーを変えてパプとテイラーを入れてオフェンスの流れを作ろうと思いました。そこをアグレッシブに行った結果が3Qの29得点に繋がりました」と宮永HCが語る通り、プラスマイナススタッツではテイラーが+9、ファイが+10となっており、2人がコートに立っている時間帯は優位に試合が運べていたことがわかる。
試合終盤にもつれた展開になれば彼らの出番もあるかと推測したが、実際は違ったメンバーで挑むことになる。
まだまだ完全体でないレバンガ北海道
4Qの試合を決める終盤、テイラーを使う選択肢は宮永HCにはなかった。
橋本と多嶋朝飛という2人のポイントガード併用でゲームを進めていく。チームの顔とも言える2人に対して、HCからの信頼が厚いのは当然であるが、4Qだけで橋本は8分26秒、多嶋は7分29秒の出場である。3Qでテイラーが良かっただけに2人を休ませる時間帯を作ってもよかったのではないかと思いながら観ていた。
宮永HCに橋本・多嶋を使い続けた理由について質問した。「宇都宮さんのファーストコンタクトディフェンスが激しく、ポイントガード1人では対応しきれないと思ったので、2ガードにして展開をスムーズにできるように考えました。」という宮永HCからの回答をもらったが、100%納得できる回答ではなかった。
先ほどのテイラーとファイのプラスマイナススタッツが良かったことを引き合いに出して、さらに聞いてみると「パプは膝のコンディションが整っていないので、トレーナーから「(プレータイムは)5分くらいにしてくれ。」と言われていましたが、流れの中で13分くらい出場しました。ディフェンス、リバウンドのところで頑張ってくれたので、テイラーが生きた時間帯が作れました。もう少しコンディション整えてやっていけば面白い形が作れると思います。」とファイのプレータイム制限の内情を話してくれた。
もしかしたら最初に宮永HCが言ったように、橋本・多嶋の併用で戦い抜きクラッチタイムでテイラーを使う選択肢は、ゲームプラン上には最初からなかったのかもしれない。しかし、テイラーとファイをセットで出場させることがチームを最大化できるレギュレーション上、使うに使えないという事情もあったようだ。
宮永HCが言う通り、コンディションさえ整えば、北海道は更に多くの選択肢を持つことができるだろう。この辺りの未来が見えていることも「収穫があった」と胸を張って言える理由なのかもしれない。
橋本竜馬「少し良くなっただけでは勝てないな」
前述の通り、この日4Qの大部分でコートに立っていた橋本が大きな声を出し必死にチームを引っ張る姿が印象的だった。「しっかり自分たちのプレーを遂行することができれば、ある程度オープンのシュートが打てることがわかってきたので、しっかりしたポジショニング、強度でプレーしようということを伝えました。相手のオフェンスで抑えられない部分があったんですけど、そこで切れることなくできることをしっかりやっていこうと言いました。」
強豪と言える宇都宮を苦しめている時間帯も多く観られた。もちろん悔しさもあるだろうが、それ以上に前を向いている言葉を橋本は何度も口にする。「結果的に離されてしまった部分はあったんですけど、最後まで戦うという姿勢は見せられたと思います。それを積み上げていくことによって僕たちが一歩一歩ステップアップできると信じているので、ブレずにやっていきたいです。」
最後に橋本は「方向性だったり、コーチが言ったことへのエクスキューションだったり、そういった部分は少しずつよくなっていますけど、ブレックスさんのような強豪チームと戦うには、少し良くなるだけでは勝てないなということもわかりました。練習の中で強度を保っていきながら、みんながイメージしながら進んでいくことが僕たちがよくなっていくための道筋じゃないかなと思います。練習と試合を大切に扱いながら進んでいくことを今できているので、1歩進んで2歩下がるという感じにはなっていますが、前を向きながら全員で進んでいくことが必要でないかなと思っていますし、それが出来ているんじゃないかなと思っています。」と会見を締めくくった。
「少し良くなるだけでは勝てないな」というフレーズが印象的だった。
チーム全体が良くなっていると実感できなけば決して出ない言葉である。
現状、チームもファンも思っていた以上に勝率は伸び悩んでいるかもしれないが、橋本の力強い言葉からは今後の北海道の躍進を信じずにはいられないと感じた。
次節、バイウィークを挟み、北海道はホームにニック・メイヨの古巣・千葉ジェッツを迎える。