信じた先にある景色〜アースフレンズ東京Z vs 越谷アルファーズ GAME1

信じた先にある景色〜アースフレンズ東京Z vs 越谷アルファーズ GAME1

これだからスポーツ観戦はやめられない。

そんなゲームが大田区総合体育館で行われた。

10月2日、アースフレンズ東京Z vs 越谷アルファーズは75-74でホームのアースフレンズ東京Zが勝利した。

ゲームは序盤から拮抗した展開で進んだ。1Qにアースフレンズ東京Zの岡田優介が1000本目となるスリーポイントを沈め、大田区総合体育館のボルテージを一段あげるきっかけを作ったように感じた。

アリーナといえば、今回からMC UMEさんの声にプラスして、オルガンが加わった。

観客を多く入れることができない中で、そのような新しい試みはアリーナの一体感を作り、思わずリズムをとってしまうような空気感だった。さながらNBAのような雰囲気と大田区総合体育館の温かい空気感はこのゲームのアースフレンズ東京Zの劇的な勝利へ背中を押したように感じた。

アースフレンズ東京Zを支えたビッグマン

アースフレンズ東京Zのキーは40分フル出場を果たしたナンナ・エグーだったように思う。
もちろん1000本目を決めた岡田、MVPを受賞した高木慎哉の活躍も素晴らしかったが、エグーが最後までコートに立ち続け、越谷アルファーズのアイザック・バッツと戦い続けたことはもちろん、フラストレーションが溜まりそうな場面でも、自らメンバーを呼び、ハドルを組んで、コミュニケーションを取る姿が目立った。

スタッツにはならないところが大切だ。

そんなことをよく言うが、外国籍であるエグーがここまで自身とチームをコントロールし、相手のバスケットボール対して、しっかりとやるべきことを遂行する姿勢には心を打たれた人も多かったのではないだろうか。

エグーの存在、戦う姿勢はアースフレンズ東京Zの岡田、高木、輪島のアウトサイドシュートにもいい影響を及ぼしたように思う。

身体を張り続けた40分

もう一つ目立ったのは、アースフレンズ東京Zがディフェンスで、すべての選手がコンタクトを嫌がる素振りを全く見せずに、バッツへのダブルチームも日本人選手が身体を張って止めに行きつづけたことだ。

岡田や綿貫瞬はB1での経験があるので、フィジカルの大切さを理解していると思うが、それ以上に目立ったのは高木やプレータイムは少なかったが栗原翼、輪島射矢も越谷のバッツやガード陣のドライブに対して、コンタクトを恐れずに身体を寄せに行ったり、ヘルプに行く姿勢が印象的だった。

ディフェンスする輪島射矢

東頭HCは会見で
「ディフェンスにミスはあった。ディフェンスは鎖のようなものだから、1つが崩れると全て崩れてしまう」
とまだ改善が必要な印象を覗かせたが、最後の最後で身体を張ることや、コンタクトから逃げないことで、相手のタフショットを作り出したり、こぼれたボールをマイボールにするなど、このゲームのアースフレンズ東京Zは、球際でハードにプレーができていたことも、流れを呼び込むきっかけになったと思う。

フィジカルはすぐに向上するわけではない。昨シーズンから所属している選手たちが激しいトレーニングを続けてきたからこそ、今シーズンの開幕という場面で、1つの成果に繋がったとも考えると、昨シーズン苦しんだアースフレンズ東京Zの積み上げが間違ってなかったことを証明するゲームでもあったように感じた。

輝きを取り戻したPG

一方、越谷アルファーズも素晴らしいゲームを展開した。ゲームの多くの時間を支配したのはむしろ越谷であったと思う。
シンプルにそれぞれの強さを生かし、バッツのポストアップや長谷川のスリーポイントをバランス良く使い、アースフレンズ東京Zのディフェンスを翻弄した。

個人的に印象的だったのは、PGのところで、今季加入した畠山俊樹と二ノ宮康平は本当に楽しそうにプレーをしていた。
2人ともサイズはないが、スキルに長けた選手であり、4Qラスト40秒で畠山がボールをコントロールしたシーンは、しっかりとゲームをクロージングさせようとテンポを落とし、余裕を見せる立ち振る舞いはさすが!と感じるシーンだった。

時にアースフレンズ東京ZのPGがミスマッチを使い、ポストアップしてきても、しっかりと対応し、そこから大きな綻びが生まれることもなかったように思う。

グッドゲームを作り出したのは…

ただ、本当にこのゲームはボールに対する執着心や戦う気持ちが最後の最後で勝敗を分けたのかもしれない。

当たり前なことだが、バスケットボールは対人スポーツで、必ず勝敗が生まれるスポーツだ。

その中でこのようなグッドゲームが生まれるには、必ず、理由がある。
このゲームにとってそれは「信頼」だったように思う。

アースフレンズ東京Zも越谷アルファーズも出てくる日本人選手達が非常に自信を持って出てきているように感じた。

そして、ベンチからの掛け声もタイムアウトで迎える姿勢、転んだ選手に駆け寄るスピード。
間違いなくそこには「信頼」があり、なによりもそもそも両HCとも送り出す選手を「信頼」しているように私は感じた。

チームを鼓舞するベンジャミン・ローソン

アースフレンズ東京Zの岡田や高木のスリーポイントが決まったことも、越谷アルファーズの長谷川智也、先ほども触れたが、楽しそうにプレーをしていた畠山や二ノ宮など…

「信頼」されることで、輝きを取り戻したり、さらにその能力が磨かれて行っているように感じるゲームだった。

両HCとも会見で内容について反省をしていたが、それ以上にスポーツ、バスケットボールの魅力や素晴らしさが詰まったこのゲームは、両HCのバスケットボールに真摯に向き合う姿勢や、今の環境でもリーグがスタートし、試合が開催されることへの感謝など、バスケットボールへの愛情であり、選手達をこの舞台でより輝かせたいという想いであったことは間違いない。

そんなゲームが、B2で行われていることをぜひとも多くの皆さんに知ってもらいたい。

能力やスキル、戦術的には荒削りかもしれないが、だからこそ生まれるストーリーがB2にはある。

ここから、さらに進化する両チームが、今シーズンを走り終えた後、どんな景色にたどり着くのか。
今から楽しみで仕方ない。

勝利に喜ぶ東京Zの若手選手達

試合後、個人取材のこぼれ話

1年ぶりに公式戦復帰を果たした輪島射矢

昨シーズン、膝の大怪我のため、公式戦出場がなかった輪島射矢が公式戦のコートに帰ってきた。

2Qから登場し、きっちりとスリーポイントを沈め、コート内での役割を果たした。

バスケットボールとは積み上げのスポーツだ。実際、輪島のスリーポイントが決まってなければ、アースフレンズ東京Zは勝利することができなかったかもしれないと考えると、このスリーポイント、輪島自身の存在の大きさを感じさせられるゲームだった。

今シーズンもコート内外で様々な役割をこなしていくと思われる。

そんな輪島が試合後のインタビューで

「怪我したのが逆に良かったのかもしれない。」

と語った。

昨シーズン怪我をしていて、東頭HCの隣で通訳などの仕事をこなしながら、様々なことを学んだことでいろんな発見があったという。

輪島は今年からクラブチームの東京ヴェルディでコーチの仕事も並行して行っている。

東頭HCからの学びと、実際に自分がコーチとしてアウトプットすることでより自身の中に多くの発見があるのだそうだ。

輪島は

「様々なことが見えるようになり、人生で今がダントツでバスケットボールが楽しい」

と笑顔で語ってくれた。

会場には41番のユニホームやTシャツをきたブースターも多く、そのような環境を楽しめている輪島の活躍に今シーズンより注目していきたいと感じた。

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