2021年4月16日、アースフレンズ東京Zに所属するケイン・ロバーツのストーニーブルック大(NCAAディビジョン1)への入学が正式に決定した。これまでもスラムダンク奨学金など、多くの日本国籍選手がアメリカの大学に進学しているが、ケイン・ロバーツはBリーグを経由してNCAAに入学する初めての選手となる。
今回は本人に進学への意気込みなどをインタビューさせてもらった。
まだあどけなさも残る18歳の愛くるしい笑みを見せながら、時に真剣な眼差しでインタビューに答えてくれた。
その表情からは、プレーだけではなく、この1年の人間としての成長も窺い知ることができた。
通訳を担当してくれた輪島射矢との軽快なトークも含めて、ぜひお読みいただきたい。
宮本 NCAAディビジョン1のストーニーブルック大に正式に入学が決まりました。おめでとうございます。ストーニーブルック大のOBとして、栃木ブレックス(現宇都宮ブレックス)でプレーしたトミーブレントンがいました。(トミーブレントンも母親が日本人)NBA選手も1名輩出していますね。進学先が決まった今の気持ちを教えてください。
ケイン 本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。肩に乗っていた荷物が降りた感じで、すごくワクワクしています。何よりこのチャンスをくれたアースフレンズ東京Zには心から感謝しています。これからの日本のバスケットボールも背負っているという自覚を持って、ここから前に進んでいけるように頑張っていきたいと思います。
宮本 ストーニーブルックはケイン選手のどんなところに魅力を感じてリクルートしてくれたのでしょうか?
ケイン トランジションのところのスピード感だったり、試合を重ねていく中での成長などと聞きました。スピード、クイックネス、ディフェンスなど、色々なところを評価してくれて、チャンスをもらうことができました。自分はアンダーサイズですが、チームのパッケージ、求めているところにマッチしたんだと思います。
宮本 バスケットボールを始める前に体操やフットボールをやってたみたいですが、その経験はバスケットボールに活きていますか?
ケイン 間違いなく活きています!開幕節GAME2のプットバンクのダンクとか!(笑)他のスポーツを経験することによって、自分の良さを引き出すことができているし、それがバスケットボールのアスレチックな部分に繋がっています。バスケットボール以外のことを経験したことによって、今のバスケットボールがあると自分では感じています。
宮本 東京ZはU15も強豪として注目を浴びる中で、ユース年代の選手にもケイン選手を目標にしている選手がたくさんいますね。
ケイン (ニコッと笑う。嬉しそう。)
宮本 これからケイン選手のようなキャリアを歩んでいく選手がたくさん出てきてほしいし、出てくると思います。パイオニア的な存在として、何か感じることはありますか?
ケイン そうやって色んな選手が自分のことを見てくれていることが、まず何よりも嬉しいし、ちょっとプレッシャーもあるけど、僕の存在は、この後に続く子供達にいい影響を与えられると思う。自分と同じようなキャリアを歩む選手が出てくることを心待ちにしています。
宮本 進学先が決まってからプレーが軽くなった印象を受けます。
ケイン それは間違いなくあって、プレーもちょっと変わったと思います。最初に言った通り、肩乗っていた荷物が降りたし、シーズンの初めは学校を決めないと…と思っているところはどうしてもあって、決まった後は、自分のプレーがすんなりと出せるようになったと思います。
宮本 最近は、スピードのあるアタックだけでなく、スリーポイントも思い切り打ててる印象があります。その辺はこれからを少しイメージしている?
ケイン そこは意識しています。元からその辺りを強化したいと思って練習に取り組んでいた部分もあります。それを続けてきたことによって、シュートの感覚もよくなってきたし、その辺も含めて、アウトサイドからのシュートが多くなってきたというのもあると思います。
宮本 NBA選手のクレイ・トンプソン(ゴールデンステイトウォリアーズ)のワークアウトを見学したことがあると聞きました。
ケイン 高校の時ですね。なんて言えばいいかわからないけど、とある高校でみんなでシュートを打っていたら、急にジムにクレイ・トンプソンが来ました。その高校がクレイ・トンプソンの母校だったみたいで、本当は彼のプライベートワークアウトの時間だったんだけど、僕らがたまたまそこにいたことによって、そのワークアウトを観るチャンスをもらった感じです。
宮本 カイリー・アービング(ブルックリン・ネッツ)も好きみたいですけど、NBA選手のプレーを真似たり、間近に体感する経験は大きかった?
ケイン もちろん生で観ることは大きいと思います。自分がやっているバスケットボールのレベルと彼らがやっているバスケットボールのレベルの違いを感じ取れるし、その差に驚かされることばかりです。
宮本 隣にクレイ・トンプソンがいるんですけど…(通訳の輪島選手の方を見て)
ケイン (爆笑)イー・トンプソン!!(笑)。
宮本 本物を見たケイン選手から見て、似てます?
ケイン 似てます!!(笑)(日本語で)
輪島(通訳で参加) ふざけるなよ!!(笑)。
ケイン 日本人クレイ・トンプソン!!(笑)。
一同 (爆笑)
宮本 すいません、話が脱線しました。ただこれだけは聞きたかったので(笑)。東京Zでケイン選手が得たもの、学んだものはなんですか?
ケイン 本当にたくさんのものがあって、1個これというのは難しいんですけど、高校からプロの世界に入って、本当にたくさんのことを学ばせてもらいました。多くの方の協力があってこのステップを踏めることを本当に感謝しています。
宮本 これからの抱負というか、シーズンが終われば、アメリカに向けて準備をしていくと思うんですけど、日本からも大きくのファンがSNSなどを通じて、ケイン選手の応援をしていくと思います。馬場雄大選手や渡邊雄太選手、八村塁選手など、日本バスケットボール界に明るいニュースが続いている中で、そこにケイン選手が続いていくことをみんな楽しみにしていると思います。ファンの皆さんに向けて一言お願いします。
ケイン このシーズンが終われば、自分は次の旅路に出発します。自分がどんな道を歩んでいるのかをSNSなどを通して、皆さんにお伝えできるようにしたいと思いますし、皆さんにビッグニュースや素晴らしい時間をお届けできるように努力していきます。前を歩いている馬場雄大選手や八村塁選手、渡邊雄太選手に追いついて、追い越せるように頑張って行きたいと思います。
最後に、私ごとであるが、筆者はスラムダンク奨学金でアメリカに渡った選手達を応援している。彼らはそれぞれの大学で、間違いなく日本よりも厳しい環境で勉学に励み、バスケットボールに打ち込んでいる。
しかし、その多くの選手の情報、活躍はなかなか日本に入ってこないのが現状である。そして、それと同時に彼らの活躍は日本では正当に評価されていないような気もしている。
そんな中、ケイン・ロバーツはBリーグを経由して、アメリカのカレッジに渡る。アースフレンズ東京Zの東頭HCも今回の大学進学に尽力した1人であり、東頭HC自身もNCAAディビジョン3でプレーをしていた1人である。
東頭HCはその経験や苦労、リアルがわかるからこそ、今回のケイン・ロバーツのアメリカ進学について、もっと多くの人に知ってほしいと訴えているし、これから彼に続く選手が出てくることを心から願っている。
筆者もそこに同感であり、何より私達、日本バスケットボールのファン・ブースターがケイン・ロバーツのこれからの活躍に目をむけ、応援し続けることで、今回開かれた新しいルートでのアメリカ挑戦、日本バスケの新しい扉が開かれると思う。キャリアの歩み方は人それぞれであることを考えれば、今の高校生年代の選手でも、身体の成長が早く、キャリアアップを目指す選手がいるなら、早い段階でBリーグに挑戦し、ケイン・ロバーツのようにスカラシップでアメリカ大学にチャレンジをする選択肢も持つべきだ。
これから間違いなく日本バスケットボールは世界から注目を集める。その1人がケイン・ロバーツであると私は確信しているし、これからも彼の活躍を引き続き応援して行きたいと思う。
そして何より、今シーズン、ケイン・ロバーツの最後となる試合が5月1日、2日に開催される。この1年の成長を、そしてこれからのケイン・ロバーツの更なる進化のためにも、大切な1戦となるに違いない。残念ながら、無観客開催ではあるが、ぜひともバスケットライブでその勇姿を多くの方に見届けてほしい。