10月21日、北海道の北海きたえ〜る
私はこの2人の直接対決をみたいと思い、現地に足を運んだ。
レバンガ北海道の#16内田旦人
秋田ノーザンハピネッツ#21長谷川暢
96年生まれの2人はBリーグではまだ若手選手と言える。しかし、今シーズン2人はチームで主力としてプレーをするだけでなく、内田旦人は地元道産子選手として、長谷川暢は地元の能代工業出身の選手として、多くのファン、ブースターから期待を寄せられている。
まだ若い2人であるが、そのストーリーはもう10年近いものとなる。
2011年滋賀全中準決勝
内田旦人の北海道代表東海第四中学校と長谷川暢の埼玉県代表大石中学校が激突した。(他に東海第四中学校には現在ドイツのルートヴィヒスブルクでACを務める宮崎哲郎、東京エクセレンスに所属する長澤亮太、大石中学校にはアースフレンズ東京Zの久岡幸太郎らがメンバー登録され、活躍していた。)
結果は57-61で長谷川暢の大石中学校が勝利し、決勝に進出。西福岡中学校との戦いにも勝利し、優勝を果たした。
この準決勝で長谷川暢はチームトップタイの18得点で逆転勝利に貢献した。一方、内田旦人はこのゲーム最多の26得点。
この試合で、多くの選手や関係者が口を揃えていたのが、内田旦人のスコアリング能力だったことを私は今も鮮明に覚えている。彼のプルアップのミドルジャンパーは完成されていて、当時から芸術と言えるものだった。
運命の悪戯はその後も続く。
2014年ウィンターカップ
私はある試合を東京体育館に観戦に行った。
北海道代表の東海第四高校 vs 秋田県代表の能代工業高校
当時、低迷をしていた能代工業のキャプテンを務めていたのが、長谷川暢だった。佐藤信長HCのもと、伝統を引継ぎながら、現代的な進化を果たした能代工業の中心には、スコアもでき、激しいディフェンス、泥臭いプレー、ハードワークを厭わない圧倒的リーダーとして存在感を見せる長谷川暢がいた。(当時の能代工業には海外挑戦を続けるスラムダンク奨学金8期生の猪狩渉やサンロッカーズ渋谷で活躍する盛實海翔も在籍していた。)
試合は能代工業高校が勝利し、能代工業高校は7年ぶりとなる準々決勝(センターコート)に進出した。
その能代工業に敗れたのが、東海第四高校のキャプテンを務めていた内田旦人だ。しかし、この時も試合には敗れはしたものの、内田旦人を止められるものはそういなかったように記憶している。
他よりも大人びた落ち着きを放ち、沈めてくるそのミドルジャンパーは超高校級…ではなく、もはや唯一無二の輝きでもあった。
しかし、バスケットボールはチームスポーツである。結果は、全中もウィンターカップも長谷川暢が勝利した。内田旦人は中学校も高校も長谷川暢に引退させれることとなった。
その後、2人はU18の代表などにも招集され、大学は長谷川暢が早稲田大学へ、内田旦人は東海大学に進学した。おそらく、この大学の4年間は2人を人間として大きく成長させた時間だったのではないか。そう私は感じている。
試合に出られない時間もあり、苦しみながらも…上級生になっていく中で、2選手はそれぞれの役割を担い、替えの効かない選手と成長していった。
実は、私は昨年の11月もこのカードを現地に観戦に行った。(写真は昨年の11月)
この2人が戦う時、きっと「リミッターが外れる瞬間」が訪れると感じているからだ。
何より、単純に私は2人のファンであり、2人のプレーに魅了される1人でもある。
そして、そのストーリーには間違いなくこれからも様々なシーンが書き足されていく。これからも続いていく2人のストーリーの目撃者に私はなりたいのだ。
今回の試合は、レバンガ北海道は大勝した。
秋田ノーザンハピネッツは前節の琉球戦の敗戦から、どこか歯車がうまく噛み合っていない。
その中で、チームを牽引したのは序盤に7得点をあげた長谷川暢だったことは間違いない。今シーズンの個人としてのパフォーマンスは申し分ないものだと感じる。
昨年の11月のレバンガ北海道との試合では、長谷川暢はまだどこか自信がなさそうで、らしくないミスも多かった。しかし、昨年もこのレバンガ北海道戦で唇を噛み締めた長谷川暢は、その後の京都ハンナリーズ戦で大爆発を果たし、その後のプレータイムを勝ち取っていった。
この試合、長谷川暢からは
「何がなんでも勝ちたい。」
そんな想いが、そのプレーからひしひしと伝わった。そして、ベンチに戻れば、試合を見つめながら、もどかしさを隠しきれない表情が印象的だった。
彼はきっと秋田の想いを背負い、リーダーになろうとしている。
それでも、きっとまだ足りない何かに自問自答しながら、必死にもがいている。そんな印象を受けた。しかし、この時間がまた、長谷川暢を進化させるきっかけになるのかもしれない。
一方、内田旦人はこのゲームでは、11得点を記録し、安定的な活躍を見せた。ディフェンスのプレッシャーは今シーズンの中で、もっとも激しく、スマートだったように見えた。
それは相手に長谷川暢がいたことが、何かしらの関係があったのかもしれない。
何より、その道産子プレイヤーが放つ綺麗な放物線、プルアップのミドルジャンパーは、レバンガ北海道を支え続けた「背番号9」の背中とどこか重なる。そう私は感じてしまう。
きっとその放物線だけで観客を魅了できる選手はそう多くない。それは選ばれし者なのかもしれないし、内田旦人にはそれを受け継ぐだけの力が私はあると感じている。
何より、間違いなくそれぞれが北海道と秋田の想いを背負って戦っている。
正直、今回、「リミッターが外れる瞬間」に出会うことはできなかった。
しかし、今回、北海道が大勝したが、きっと次は同じようにはいかないと思う。
最後に唇を噛み締めた長谷川暢の姿がそう私に感じさせた。
いつか必ず、この2人がこのチームを背負って立つ選手になるだろう。
そして、お互いがお互いに負けたくない。そんなエナジーを出し、1歩先へ、そのもう1歩先へ、進化を遂げていくに違いない。
次の対戦は2021年1月27日の秋田ホーム。
それまでに、2人がどんな進化を遂げていくか。
今シーズン、内田旦人、長谷川暢の進化を多くの人が、その目に焼き付けて欲しい。
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