宮本將廣のExtraColumn003「僕はNBA選手になりたかった。」

宮本將廣のExtraColumn003「僕はNBA選手になりたかった。」

10月27日 秋田ノーザンハピネッツの本拠地CNAアリーナ
ピンクに染まる圧巻の景色の中に背番号21の姿が飛び込んできた。

長谷川暢

その瞬間、自分の中の感情が一気に奮い立った。

「来た!!」

彼との出会いは、18-19シーズン終了後のオフ。
若手選手が集まったワークアウトを見学させてもらった時だった。

10月27日 CNAアリーナにて

早稲田大学のころ、いや、能代工業のころ、なんなら大石中のころから彼のことは知っていた。

世代を代表する選手だ。

左利きのPG…
それだけでもかっこいい。

スキルの高さ、クールな表情とは裏腹に熱いプレーも見せる、キャプテンシーを持った選手。
10歳も年下の長谷川暢はある意味僕の憧れの1人でもあった。
今シーズン、なかなかプレータイムがない中で、その瞬間が来た時に、感動とは違う感情が芽生えた。

話は飛ぶが…
僕はNBA選手になりたかった。

そう思っていたのは宇都宮ブレックスの田臥勇太が日本人初のNBA選手になる数年前の話だ。

でも、諦めた…
たったワンプレー…
たった1つのミスで…
バスケが怖くなった…

今思えば、それはどうしようもないプライドだったが、思春期の自分には受け入れがたい経験だった。

田臥勇太が日本人で始めてNBAのコートに立った時、僕がバスケをやめた時だった。

猪狩渉という男がいる。
彼との出会いもまた18-19シーズン終了後のオフ。

18-19シーズン終了後のワークアウト 都内某所にて

楽天のドキュメンタリーで
「NBA選手になりたい」
まっすぐな瞳で語るその言葉が、僕の心の奥にしまった感情を叩いた。

自分はなれなかったな…

誰もが同じような感情を持ちながら、多くのことを諦めて生きていく。
でも、きっとどこかで…なんて淡い期待を持ちながら、なんとなく大人という道に進んでいく。

あいつは特別だ。
才能がある。

そう思って諦めていた。
猪狩渉と知り合って突きつけられた、言い訳をしていた自分という存在。

彼はどんな困難も乗り越えてきた。
そんな自信がその笑顔から、語る言葉から感じられた。

2人とも魅力的な人間であり、魅力的なプロバスケットボール選手だ。

正直、出会って間もない彼らのことを、僕はよく知らない。
それでも出会った瞬間から、なんなら出会う前から一方的に、彼らのそのプレーに感情移入している自分に僕は気づいた。

きっと、自分もあんな風になりたかったんだ。

才能のせいにして逃げていた。
努力の足りなさや知識の少なさを誰かや何かのせいにしていた。

でも、彼らはいつも自分と、そしてバスケとまっすぐ向き合っている。

見ただけで、彼らが想像を超える努力をしてきたことを感じられる。
でもその想像を超える努力がどんなものかは僕にはわからない。
挑戦から逃げてきた自分にはわかってはいけない。

「Ifn’t」

というバスケアパレルブランドがある
もしもあの時…
そんなざまざまな想いが詰まった造語だ。

これを作ったのもまたプロバスケットボール選手の輪島射矢である。

もしもあの時…自分はバスケをやめてなかったら、彼らと同じ舞台に入られたのだろうか…

そんなどうしようもない妄想を何百回と繰り広げてきた。

輪島射矢と猪狩渉は福島ファイヤーボンズで同じ時を過ごした。
その時、猪狩渉が輪島射矢に夢を聞いた時、真顔で
「NBA選手」
と答えたそうだ。

猪狩渉はある時、僕に伝えてくれた。
「ワジ(輪島射矢)がいたから、僕らも海外に挑戦できる」と。
(※輪島射矢は20代前半に単身アメリカに渡り、独立リーグでプロ選手のキャリアをスタートしている)

長谷川暢
猪狩渉
輪島射矢

多くのプロバスケットボール選手がいる中で、なぜ自分は彼らに特別な感情を抱くのだろうか…

それはきっと…なりたかった自分自身と重なるなにかがあるからだと思う。

それでも3選手とも順風満帆な今を過ごしているわけではない。
それでもバスケが大好きで、上手くなりたい。
そんな素直な想いが溢れるばかりに伝わってくる。
そんなリアルがまた自分の心に突き刺さる。

そう、そんな自分に僕はなりたかった。

あの時、素直に
「それでもバスケが大好きだ!」
と言えたなら…

きっと、未来も少し変わっていたかもしれない。

でも、だからといって今に不満はない。
そんな彼らと出会えたことで、今更ながら挑戦しようという自分自身と出会えたから。

だからこそ、応援したい。
何か力になれるわけではないけれど、それはあの日、現実から逃げ出した自分への挑戦でもある。

10月27日 CNAアリーナ
長谷川暢がコートに立った瞬間
自分の心が奮い立った。

次は僕の地元北海道での試合が待っている。
そんなワクワクは10代の頃にも感じられなかった不思議な感情だ。

今、そんな青春の帰り道を彼らのお陰で歩けている。
彼らと出会った今なら自信を持って言える。
僕はバスケが大好きだ。

エクストラパスの余計な方の男・宮本

▪️猪狩渉出演のNBA制作ドキュメンタリー「世界へ羽ばたく日本バスケ」(出典:楽天NBA)
https://nba.rakuten.co.jp/videos/1310

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